がん免疫治療(Cancer Immunotherapy)について、真剣に学ばれておられる患者さんは増えているようですが、真剣にニュートン2014年1月号P110取り組んでいる医者や科学者が少ないのが日本の現状です。ですから、がん免役治療の体系だった説明も不足しています。ここでは、この説明にトライしてみたいと思います。

 

先ず前提として、人体の免疫システムについて整理しておきましょう。最新の研究では、人体の免疫システムは大きく3種類に分類されます。

一つ目は①自然免疫システム」といもので、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)という殺傷力のある細胞の仕事のことを指します。このシステムの問題は、NK細胞に特異性がないことです。つまり癌細胞を探したり追いかけるという性質を持たないので、偶然の出会いに期待するしかないのが弱点です。

二つ目は②液性免疫システム」と言い、ウィルスなどの感染に対して体内に抗体というものを作る仕組みのことを指します。一度体に抗体が出来ると、体はその病気にかかりにくくなるという仕組みです。がんに特異的な抗体が出来ても、癌細胞を殺すというシステムではないので、それほどの治療効果は期待できないとされています。

三つ目は③細胞性免疫システム」と言います。これは、細胞障害性T細胞が、がんの特異性を認識し、癌細胞を攻撃するという仕組みのことを指します。こちらが殺しのメカニズムになりますので、治療効果が期待できます。

それでは、現在日本で見られる様々ながん免疫治療は、どのようなものなのかを見てみます。

まず、丸山ワクチンとか蓮見ワクチンと言われるものがあります。これは、免疫賦活剤と言われるもので、①の自然免疫システムを活性化させようという狙いはあるものの、はっきりとした治療効果はないとされています。但し、体の調子は良くなるらしく、これを治療と称して提供している医療機関はまだまだ存在しているようです。

次に、活性化リンパ球療法、ANK療法などに近い名称のものがあります。これも、①のシステムの担い手であるNK細胞を増やして提供しようというものですが、特異的に癌を殺すものではないという点で、はっきりとした治療効果は期待されないとされています。但し、一般的な免疫力はアップし、体の調子は良くなりますので、これらを治療と称して提供してる医療機関は多いです。一部の大学病院での臨床研究として受けられるものがありますが、これは抗がん剤治療よりは圧倒的に副作用がないので、QOL改善などを狙いとして、それを治療と称しているという類のものが多いようです。

次に、がんペプチドワクチン療法というものがあります。これは、③のシステムを稼働させることを狙ったもので、ある癌特有の抗原をワクチンとして投与するものです。これは、がん特異性を狙うという方向性がはっきりしているので、今まで日本でもNHKをはじめ多くのマスコミで特集されるなど取り上げられてきました。抗原を大量生産してワクチン化を狙うということで、製薬会社としてもビジネスとして考えやすい性格ということもあり、日本でも海外でも多くの大規模治験が展開されているので、大学病院で受けられるがん免疫治療というと、このタイプが圧倒的に多いということになっています。しかし、正式な治験の結果として治療効果が認められないという結果が続出しています。これは何故かというと、おそらく③を狙っているとはされるものの、実際には②の液性免疫を活性化してしまっているからです。

次に、樹状細胞を使った治療があります。この樹状細胞を、あるがん抗原ペプチドと一緒に育てたり、あるいは癌細胞と一緒に育てたり(Co-Culture)するという手法が使われています。これは③を狙った治療法であり、いままでの治療法と比較すると癌を特異的に攻撃しようとしている治療デザインなので、より進歩的だと言えます。しかしながら、ターゲットとしているのが単独や複数のがん抗原であることにより、がん細胞が性質を変異させると(例えば、あるがん抗原が狙われていることを察知するとそのがん抗原を細胞表面から引っ込めるなど)効果がなくなってしまうという問題に対処できないという限界があるという風に考えています。

そこで、この限界を克服する為にデザインされたのが、がん細胞そのものを樹状細胞と融合(フュージョン)させてしまい、がん細胞のDNAを全て樹状細胞に取り込んでしまうことによって、がん細胞の全ての抗原情報を細胞障害性T細胞に教育することが出来るというコンセプトに基づいています。この方法が、③を狙う治療法としては、一番効率的であるということが言えると思います。

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